「悪い情報は出てこない」のはあなたの責任 [マネージャー自習室]
誰かに怒られて喜ぶ人は、圧倒的に少数派です。
恫喝まがいに責め立てられたり、ネチネチとしつこく追及されたときの精神的ダメージは大です。
人の感情は正直なもので、”怒られたくない気持ち”は"悪い情報を隠す”行動を呼び起こすようになっていきます。
"マイナス情報"をそのままにしておいて、事態が好転することはまずありません。
時間とともに状況は悪化していきます。
かといって、部下から"マイナス情報"があがってくることを期待できません。
あなたが積極的に"引き出す"努力をしなければならないのです。
「課長、お客さまからクレームが出て、ものすごく怒られているんですが・・・」
「どうして怒らせるようなことをするんだッ!早く行って謝ってこいッ!」
こんな場面をよく見かけます。
勇気をふりしぼって"告白"しているのに、身内からも叱責されてはショックは大きいものです。
”課長に言ったら一緒に打開策を考えてくれるだろう”
そんな期待をもって"告白"しているのです。
本人だけでなく、まわりで見ている人たちも同じように思うでしょう。
上司のあなたは
「俺はそんなことはない。部下の話はちゃんと聞いている」
と主張するかもしれません。
部下にメモを取らせるな [マネージャー自習室]
不意を突き、目をテンにする [マネージャー自習室]
マネージャーの一番の役割は、部下の成長をサポートすることです。
素質があっても、上司によって成長できない部下はたくさんいます。
上司が替わると、たちまちやる気に満ちあふれ、仕事で成果を出すことはよくあることです。
同じ人物かと思うくらいに、モチベーションは人の行動を大きく左右するものです。
人間ですから、どんなに優秀な人材でも、気持ちが高まらないこともあれば、仕事が順調なときに、つい油断してしまうことも出てきます。
そんなときにこそ、マネージャーは部下に対して、「良い緊張感」を持たさなければなりません。
担当者は、上司から突っ込まれそうなことをある程度想定しているものです。
営業なら、「今月の新商品の受注はどれくらいいく?」と聞かれれば、「価格的に厳しくて、見込みは○○くらいになりそうです」などと”言い訳”も含めて返事をします。
スタッフの場合は、「例の企画書はもうできたか?」とたずねられたら、「あと1、2か所データの裏付けが確認できたら、一度、見て頂けますか」と逆に問いかけ直して、返答をぼやかしたりします。
”今、取り組んでいる仕事”のことは当然、誰でも十分意識しています。
そこをことさら強調して、担当者にあれこれ指示を出す必要性はそれほどありません。
それよりも、”忘れがちなこと”に関して質問を繰り返す方が、能力アップにつながります。
人の記憶というものは、新しいものがどんどん上書きされて、古いそれは薄れてゆく運命にあります。
さらに”使用頻度”が少ないと、頭の中からすっぽりと抜け去ってしまいます。
仕事に必要な基本的なことも、案外曖昧に覚えているだけというケースも少なくありません。
こういう現状があるので、マネージャーは事ある毎に、不意を突いた質問を担当者に投げかけましょう。
住宅設備機器メーカーにいた頃、
「電気代って1kWいくら?」
「1間は何mm?」
「キッチンの高さは何cm?」
「全社の去年の売上は?」
「競合他社の品番と価格は?」
「13A(天然ガス)の発熱量は?」
「○○工務店はどこのメーカーを採用?」
といった短い質問をよく担当者にしていました。
即答出来ないといって、ネチネチと詰問するようなことはしません。
何も言わずにその話題は終了します。
「所長からどんな質問が飛んでくるかわからないから、準備しておこう」、そう担当者が意識をしてくれることが狙いだったからです。
即答できたときには、「よう知ってるな」、「勉強してたんや」、「意識高いな」と、ひと言添えることを心がけていました。
やったことに対して、 何らかの”反応”があることは、やりがいにつながります。
こちらが思っている以上に、担当者が広く深く”準備”していることもあり、 能力開発と人材育成には有効な方法だと実感したものです。
あなたの部門でも、一度チャレンジしてみてください。
部下と競わない [マネージャー自習室]
特に営業職の場合だと、一人でも頭数が多い方が売上に貢献できるという考えのもと、「プレイングマネージャー」として活躍されるケースがよくあります。
売上実績を上げてきた営業マンが、営業所長や営業課長に昇格しているはずなので、”売り子”としての能力は担当者に比べれば高いです。
売上担当を持った営業マネージャーは、自部門の売上を確保するために自ら営業活動に注力します。部門全体の数字が悪ければ、その動きはさらに活発なものになっていきます。
市場全体の環境が良いときは、営業マンの能力差ほど売上実績には差がつきにくいものですが、状況が悪化するほど、実績に優劣が出やすくなります。
担当者の数字がなかなか上がらない中で、マネージャーが自分で売上を作れば、自慢もしたくなります。
「どうして売上が上がらないんだ。俺みたいにやってみるよ」
ついつい口に出してしまいそうなフレーズですが、ここは我慢すべきなのです。
営業マネージャーのあなたが、一人でがんばっても物理的な限界というものがあります。身体は一つしかないのです。
それよりも、部下の能力を高めることに重点を置いた方が、中長期的には結果を期待できます
そのためのまず第一歩として、「部下と競わない」ことを肝に銘じましょう。
競ってしまうと、次のようなデメリットが生じてきます。
1.自分たちにはできないと思い込んでしまう(所長・課長だからできる)
- 多くの場合、あなたの方が営業能力があるのです。その力を誇示しても、部下は委縮したり、やる気をなくすだけです。
2.部下の話を聴く機会が減る
- 実績を上げると、誰しも話をしたくなるものです。部下の話を聴かずに、自分の成果を一方的に話してしまう危険性があります。(部下の育成に欠かせないコミュニケーションが不足する)
心当たりのあるマネージャーは、意識しましょう。
部下は育てられないが、邪魔するのはカンタン [マネージャー自習室]
元部下や後輩が昇進・昇格したりすると、
「あいつは俺が育ててやった」
「今のあいつがあるのは、俺のおかげだ」
などと声高に吹聴する人々が現れてきたりします。
しかし実際のところ、能力を磨き、実力を発揮して台頭してくるような人材は、誰のもとで仕事をしても、それなりの実績を残すことができるものなのです。
上司や先輩の指導やアドバイスがなくても、自分で”盗み取る”力も持っていたりします。自分の仕事の参考にしたり、取り入れたりするだけでなく、好ましくないことでも”反面教師”として糧にしてしまうでしょう。
そして旺盛な好奇心を発揮し、自分で考え、何事にも前向きにチャレンジしていく、そんな素養を兼ね備えているものです。
まったく、やる気がなく、能力も低い人のモチベーションを高まて、バリバリやれる人材に育てたのであれば、「俺が育てた」ことになるのでしょうが、そんな事例は見たことがありません。
人が育たなくては、企業や組織の成長は望めないことは誰にでもわかることです。発展し続けるためには、一人ひとりの能力アップというものが欠かせません。そのためには、自ら成長しようという意欲を持った人材の採用が不可欠になってきます。
人が成長するには、”育つための環境整備”も大事ですが、自ら伸びたいという気持ちがもっとも重要なのです。
”伸ばそうとする力”と、”伸びようとする力”が、うまく噛み合わなければ、発育は滞ってしまいます。
ですから企業は成長しそうな種を発見し、自社に取り込むことに最大限、注力しなければなりません。
獲得した種がすべて順調に育ってくれれば良いのですが、現実にはなかなかそうならないものです。
せっかくの”成長種”も育てる環境しだいでは、育たなくなってしまうリスクもあります。
養分のある土に種をまき、適度な肥料と水をやって、陽があたりやすいようにしてあげればいいのです。ところが、痩せた土地に放り投げられ、無節操な育成しかされないケースも少なくありません。
植物は土の中の水分が減ると、だんだんと萎れていき、しまいには、いくら水を与えても回復できない状態になってしまうといいます。
それぞれの種の発育条件を見誤らないことが、人材育成には何よりも重要なことなのです。
直属の上司には、重大な責任が課せられていることを十分に自覚し、部下に接しなければなりません。
責任が大きいからこそ、やりがいも大きいのがマネージャーの仕事です。